1990年のオレンジ族とともに新たに生まれたコーヒー文化

By Cafesba , 15 2月, 2026
1990年代の狎鴎亭

20世紀後半の韓国のコーヒー文化はタバンが中心でしたが、1990年代になると、それまでの伝統的なタバンは減っていき、
コーヒーショップやカフェとして、コーヒー店が開業されることが増えました。

1987年に韓国は軍事政権が終わり、大統領を直接国民が選挙で選ぶ民主制になりました。1988年にはソウルオリンピックが
開催され、韓国の経済発展を象徴づけました。

この民主化による自由な空気と経済発展により韓国のコーヒー業界にも変化がありました。
90年代前半から中盤にかけて、ソウルで最もおしゃれな場所といえば江南(カンナム)の狎鴎亭洞(アックジョンドン)でした。
ここには、富裕層の若者が集まる洗練されたカフェが点在していました。

親の莫大な富を背景に、外車を乗り回し、海外ブランドを身にまとい、贅沢な消費を楽しむ若者たちが出現しました。
このような若者たちはオレンジ族と呼ばれました。
オレンジ族の由来は諸説ありますが、当時のファッションやライフスタイルにおける「オレンジ色」のポップで派手なイメージで、
明るく目立つ新世代文化の象徴だったという説が有力です。

現代百貨店アックジョン本店の向かい側にあった「マクドナルド(韓国1号店)」周辺で彼らは活動をしていました。

アメリカのビバリーヒルズにちなんで作られた「 狎鴎亭ロデオ通り」には、高級ブティック、インポートショップ、そして洗練されたカフェが立ち並び、韓国で最もトレンディな場所となりました。
現在世界を席巻しているK-POPのシステムも、この時期の狎鴎亭で形作られました。
SMエンタテインメントがこのエリアに本社(スタジオ)を構え、H.O.T.やS.E.Sといった第1世代アイドルを輩出しました。

■ボディーガード
この時期のこのエリアを象徴するコーヒー店として「ボディガード」がありました。
店の名前は1992年に公開され韓国でも爆発的なヒットを記録したケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストン主演の映画『ボディガード』です。
狎鴎亭のロデオ通りの入り口近く、非常に目立つ場所に位置していました。

当時の大学周辺のカフェが1杯500〜1,000ウォン程度だった時代に、数倍の価格設定(5,000ウォン以上)がされていました。
それでも、店前には高級車が並び、店内は常に最新のファッションに身を包んだ若者で溢れていました。
まさに「階級やステータスを確認する場所」と言えます。

気に入った相手のテーブルに「オレンジジュース」を運んでもらうよう店員に頼み、相手がそれを飲めばカップル成立…という、
当時のオレンジ族のナンパ伝説の舞台としてよく語られます。

当時の韓国で初めてのガラスカーテンウォールを持つ「透明カフェ」として知られました。 
明るく広い空間にテーブルと照明が配置され、伝統的な暗い茶室(dabang)とは対照的なモダンでおしゃれな雰囲気を提供しました。
店内は高い天井と洗練されたインテリアが特徴で、まるで映画のセットのような雰囲気でした。

当時、この店でアルバイトをしていたり、客として通っていた美男美女が芸能事務所にスカウトされ、スターになったというエピソードも多いです

あまりの「派手さ」や「若者の逸脱」の象徴として、ニュース番組や新聞で「過度な消費文化の温床」として批判の対象になることもありましたが、それこそが当時の若者にとっての「憧れ」を強める結果となりました。

他にもこのエリアには、

■ハル(Haru / 하루)

「ハル」は、1990年代の狎鴎亭エリアにほど近い清潭洞エリアにおいて、最も洗練されたモダンな空間として語り継がれているカフェです。
インテリアの衝撃: 当時のタバンは、木目調や赤いベルベットが主流でしたが、「ハル」はコンクリート打ちっぱなしのような無機質でモダンな内装を取り入れていました。
窓が非常に大きく、店内の客が外のロデオ通りを歩く人々を「見る」ことができ、同時に外を歩く人々からも店内の「おしゃれな客」が「見られる」という構造になっていました。

オレンジ族の中でも、より芸術的感度が高い層や、広告・ファッション業界の人々が集まる場所でした。


■Café de Flora
清潭洞にったパリのカフェを意識したようなテラス席があり、当時の若者にとって「ヨーロッパ風」は最大の憧れでした。
90年代後半の江南で最も有名な「電話付きソファカフェ」で、携帯電話普及前(1997-98年頃)に公衆電話やメモ帳が置かれていました。
客同士が「〇〇、3番ソファで待ってる」「ハル行ったから次ここ」などメモを残し合う文化がありました。
2012年の韓国の人気テレビドラマReply 1997で描かれてるような場面です。

■Jardin(쟈뎅)
韓国初の原豆(レギュラーコーヒー)専門店として知られる**「Jardin(ジャデン/ジャディン)」の1号店は、1988年に狎鴎亭(アックジョン)にオープンしました。
988年のソウルオリンピック直前、狎鴎亭にオープンしたJardin(当時は「Jardin Coffee Town」)は、韓国で初めて「豆から挽いて淹れるコーヒー」を専門的に提供した場所です。
それまでの韓国では、コーヒーといえば「砂糖とクリーマーが入ったインスタント」が当たり前でしたが、そこに現れたJardinは、最高級の豆を使い、洗練された空間で提供する「カフェ(Cafe)」という概念を韓国に根付かせました。​
「ヘーゼルナッツコーヒー」の大流行を牽引したのもJardinだと言われています。
本格的なブラックコーヒーがまだ苦いと感じる人が多かった時代に、香りの良いフレーバーコーヒーを提案したことで、多くの韓国人が「原豆コーヒー」の虜になりました。
 

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